カートの本と音楽の(PUNKな)日々2

藤井太洋「オービタル・クラウド」

藤井太洋の「オービタル・クラウド」を読んでみた。

2020年、流れ星情報〈メテオ・ニュース〉を運営する木村和海は、
衛星軌道上の宇宙ゴミ「デブリ」の不審な動きに気がつく。
折しも、高名IT起業家が民間宇宙旅行のプロモーションで衛星軌道ホテルに滞在すべく
宇宙に飛び立つ。
アメリカの起業家、CIA、NORAD(北米航空宇宙防衛軍)、モーリシャスのアマチュア天文写真家
JAXA、イランの科学者、そして謎のテロリストを巻き込んだスーペス・テロの渦中の人となる木村。

単純に面白かったっす。
スペース・テザーと云うあらたな宇宙開発の可能性が、テロリストの秘密兵器としてスペース・テロに悪用されていく様。
そしてそれを何とか阻止しようとするプロ・アマが、国家やら立場の枠を超えて協力する様は単純に楽しい。
ずいぶんと懐かしいSDI計画なんかも登場。
ただ、あまりにも有能なメンバーが都合良く登場して、大した破綻もなくサクサクと問題解決っていうのは
ちょっとご都合主義的すぎるのでは。ほぼ人的損害もゼロだし、結局みんな善人だし。
例えばトム・クランシーと比べる(ほぼ新人の作者をトム・クランシーと比べるのはちょっと意地が悪い気もするが、
ジャンル的にはしょうがない訳です)と、どうしたってリアリティとか人物の書き込み(この点はかなり減点)などの面で
まだまだ差がある。
でも、逆に云うとトム・クランシーと比べたくなる程度には出来が良いとも云える。
と、文句は云ってみたものの、充分に面白いおススメ作です。この作者はこれからもっと伸びそうだと期待大。

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柳広司「ダブル・ジョーカー」

「ジョーカーゲーム」の続編。
今回ももちろん結城中佐が率いるD機関が活躍します。
D機関に対抗するために、新たに陸軍内に作られた風機関を描く“ダブル・ジョーカー”。
ドイツ国防軍情報部の情報部第三課ヴォルフ大佐のスパイ狩りを描いた“柩”。
共に結城中佐の寝首を掻こうとしますが・・・。
その他にも、日米開戦前夜のアメリカでの任務を命じられた男を描いた“ブラックバード”
など全5編を収めた短編集。

どれも面白く読めました。
善く云えばサクサク読めるリーダビリティーの高さ。
悪く云えば軽い。まったく同じ感想を「ジョーカーゲーム」を読んだ時にも書きましたけど
もう少し重くても良いと思うんだけどね〜。
大変面白いんですけど、例えばトム・クランシーとかアンディ・マクナブなんかが
俺は好きなんですけど、あちらは世界ランカーみたいなもんだからなぁ。
まあ、アンディはあまり有名じゃないけどね。
でも、アンディ・マクナブを最初に読んだ時はかなり衝撃を受けたな俺は。

閑話休題

面白い小説でした。
でも、スパイ小説慣れした人には食い足りない気がするんですよね〜。

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柳広司「黄金の灰」

「ジョーカーゲーム」が面白かったので、長編デビュー作らしい「黄金の灰」を読んでみました。

うーん、これは俺は駄目だなぁ。
正直に云いますと、3分の2までは読みましたが・・・あとは飛ばし読みしつつ・・・。

ホメロスの「イリアス」に描かれたトロイア。
トロイアの発掘にとりつかれた男ハインリッヒ・シュリーマン。
この実在の人物シュリーマンを主人公に、トロイアの発掘を舞台にしています。
<プリアモスの財宝>を発見して、この地がトロイアと判明して大喜びのシュリーマン。
しかし、発掘地は兵士にとり囲まれ、不審火とともに黄金は消え
殺人までも・・・。

うーん面白そうだと思ったんですけどね〜。シュリーマンをはじめ登場人物が魅力に乏しい。
語り手のシュリーマン夫人も視点が定まらない方で・・・。
ちょっと期待外れですね。これを先に読んでいたら「ジョーカーゲーム」も読まなかっただろうなぁ。
動機やトリックも、私にさほど・・。

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柳広司「ジョーカーゲーム」

これは面白かったなぁ、「このミス08年」の第二位かぁ。

昭和12年の日本。陸軍内部での反対を押し切って元凄腕スパイの結城中佐が作った
スパイ養成学校「D機関」を舞台とした連作短編集。

「魔王」と渾名される元スパイの結城中佐。彼は味方の裏切りに拠り、敵国でとらえられたが、
過酷な拷問を潜り抜け隙をみて脱出に成功。「スパイなど武士道に反する」と云う陸軍内での反発を物ともせずに
現在は「D機関」と呼ばれるスパイ養成学校を運営しています。
そこは陸士出身などの軍人が排除され、帝大や外国の大学を出た優秀な者たちが集められています。
選抜試験は「建物に入ってから試験会場までの歩数と階段の段数は?」とか
「まったく意味の無い文章を読ませ、しばらく時間をおいてから逆から暗唱しろ」などの
奇妙な問題ばかり。しかし、そんな試験にパスした連中は・・・。

「ジョーカーゲーム」参謀本部からD機関を“スパイ”するために送り込まれた佐久間。
ある日、スパイと思われる親日家のアメリカ人の家にニセの憲兵隊を率いてガサ入れに行く羽目になるが・・・。
「幽霊(ゴースト)」要人暗殺計画の首謀者の疑いを、憲兵隊にかけられた英国総領事。
D機関は真偽を確かめる為に、洋服屋の店員としてスパイを送り込むが・・・。
「ロビンソン」ロンドンでのスパイ活動のため写真屋になりすました伊沢は
新米外交官の所為で英国情報部に捕まってしまうが・・・。ロビンソン・クルーソーに助けられるとは・・。
「魔都」上海憲兵隊に配属された本間は、上官から内通者を探し出すように命令される。
本間に以前逮捕されたという新聞記者が現れ、“D機関”の情報をもたらすが・・・。
「XX(ダブルクロス)」ドイツとソ連のダブルスパイを疑われるドイツ人記者。
彼を調査していた飛崎の監視下にありながら、記者は死体に。自殺なのか他殺なのか・・。

どれも、リーダビリティが高くサクサク読めます。
スパイ物で、尚且つ太平洋戦争前夜と云う設定のわりには話も暗くならず、スタイリッシュ。
難を云えば、スタイリッシュで読みやすいあまり“軽い”。
特殊な技能やその訓練のディテールが、ほとんど無い。
の2点が気になったかな。でも、“軽い”のは好みの問題だよなぁと自分でも思う。
スパイ物とかを普段読まない人にも読みやすい訳ですから、長所とも云えるのかも。
でも、ディテールの甘さは個人的には結構気になる。
アンディ・マクナブやスティーヴン・ハンターの「極大射程」に衝撃を受けたのも
そのディテールの細かさ(勿論ストーリーもキャラクターも一級品だったし)が大きかった。
とは云っても、これも短編では仕方がないのかも。
面白いのは間違いないです。
これを読んでいたら、中野学校に関しての本が読みたくなりますね。

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