カートの本と音楽の(PUNKな)日々2

ケン・リュウ「蒲公英王朝記 巻の一 諸王の誉れ」

ケン・リュウの「蒲公英王朝記 巻の一 諸王の誉れ」を読んでみた。
ケン・リュウは中国系のアメリカ人で、短編集「紙の動物園」で有名。
本編はケン・リュウ初の長編と云う事なんですけど、ケン・リュウ自体読むの初めて。

どうでもいいんですけど、ちょっとカバー絵がビミョーにダサいのが気になる。
さて、本編ですけど、どこか架空の世界の話。
ダラ諸島には七つの王国が在ったが、ザナ国が新型の飛行船などの圧倒的な軍事力で
他の6国を征服し、ザナ国王は始皇帝としてダラ諸島に圧政を敷く。
無鉄砲な少年クニ、名家の血筋の少年マタ。
二人はそれぞれ皇帝の巡遊を目にし、それぞれの感慨を抱く。
やがて、圧政に対して叛乱が起き、成長した二人の少年も反乱軍に身を投じる。

予備知識なく手に取ったんですけど、読めば誰でもわかるように、
楚漢戦争がモチーフ。
クニは劉邦、マタは項羽と。
どうなんでしょうね・・・。
興しろいかと云われれば、そこそこ面白いけど興しろくはないと云う感じ。
ファンタジー的、あるいはSF的な要素も特に無く、では何故に架空の世界が舞台なのか?
2巻以降でなんか変化球が来るのかな。
イヤそれなりに面白いんですよ。でも司馬遼太郎の「項羽と劉邦」や、
司馬遷の「史記」を読んだ方が数倍面白いし興しろい。
人名がカタカナなのも読みづらいし・・・。
登場人物たちも、やや魅力に乏しく感情移入しがたい。
宦官ではなく、侍従って云うのもなんか意図的なのか?

一応、2巻を読んでみようとは思う。

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エトガル・ケレット「突然ノックの音が」

エトガル・ケレットの「突然ノックの音が」を読んでみた。

エトガル・ケレットはイスラエルの作家。
全38話の短編集なんですが、ちょっと妙な感じのする話とでも云うか
ジャンル的には奇想小説が多いかな。
表題作はこんな話。
「話をしてくれ」と口髭を生やした男が、主人公にピストルを突き付けながら要求する。
やむなく「部屋に、二人いる。と、突然、ノックの音が」と話し始めると、実際にドアをノックする音が。
ドアを開けると、わかい世論調査員の男が。追っ払おうとすると、やはりピストルを取り出して
「さっさと話をはじめろ」と要求する。
と、突然ノックの音がして、今度はピザの配達員。
配達員は「ピストルは持ってないんだ」ときまり悪げに、ナイフを取り出す。
・・・・。

なんか変な話でしょ?
こんな感じの少し不思議と云うか、ちょっと変な話が多いんですが、
結構話の出来に波があったりもして、評価としてはビミョーですな。
まあ、何篇かはクスリとさせられる。

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ヨーン・フェレメレン「ピーター・ブリューゲル物語」

ヨーン・フェレメレンの「ピーター・ブリューゲル物語」を読んでみた。

タイトルに“物語”とある通り、伝記ではなくフィクションです。
単にブリューゲルと云えば、ピーター・ブリューゲルな訳(と僕は思ってるんだけど)ですが、
何しろネーデルランドの画家なんで、名前の表記がピーテルなのか、ペーターなのか、
はたまたペーテルなのか・・・。
代表的な作品は「雪中の狩人」とか「バベルの塔」とか「絞首台の上のカササギ」あたりが有名で
僕の好きな画家の一人なんです。
長男(父と同じピーテル)、二男ヤン、さらには孫とひ孫にまで画家を輩出した一族の
まあ初代と云えば良いのかな。

それはさて置き、当時のネーデルランドはスペインに支配されている上に、
ルターの宗教改革の影響もある為、カトリックからの新教徒弾圧にもさらされ
かなり大変な状況の中に置かれていた訳です。
この物語も、そんな状況に振り回される人としてのブリューゲルに力点を置いていて
芸術論的な方向にはほとんど踏み込んでいない。
もともと、ブリューゲルの生涯には不明な部分(そういう意味ではヴァザーリが列伝を著した
おかげで、ルネサンス期の芸術家の生涯が史料として残されたのは大変な僥倖である)が多く、
作者の想像で補うしかないのは致し方ないんですが、
弾圧者側であるグランヴェル枢機卿との関係や、無学な人物として描かれている点など
ちょっと納得がいかない部分もある本でした。

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パトリシア・ハイスミス「11の物語」

パトリシア・ハイスミスの「11の物語」を読んでみた。
映画「太陽がいっぱい」の原作者として有名なパトリシア・ハイスミス。
実は今まで読んだことが無かった。
読んだことは無かったんだけれども、漠然とミステリーとかサスペンスの作家なんだろうと思ってたんですけど。
まさか、カタツムリな作家だったとは知らなかった。
タイトル通り11篇の作品を収めた短編集なんですが、
カタツムリがメインな作品など、どちらかと云うと不条理・奇想な作品多し。
ハイスミス自身が趣味がカタツムリの飼育だったらしいんですが、
カタツムリをテーマにかなり不気味な話を書いていると。
結構面白かったです。
が、やはり(太陽がいっぱいの主人公の)リプリーシリーズを読んでみないと。

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ニック・ホーンビィ編著「乳首のイエス様」

ニック・ホーンビィ編著の「乳首のイエス様」を読んでみた。
アンソロジーになっているんですが、出版元のイギリスでは本書1冊に付き1ポンドが
自閉症児のための学校「ツリーハウス」に寄付される仕組みになっているそうでして
日本での出版でもチャリティ出来ないか検討したらしいですが、残念ながら実現しなかったとの
訳者あとがきあり。

12名の作品が収められているんですが、ちょっと玉石混交な感じで
作品の出来にややバラつきがありますね。

個人的に良いなと思ったのは表題作のニック・ホーンビィの「乳首のイエス様」
ガタイの良さを活かしてクラブの用心棒をしていた主人公は、
危険だからと彼女に説得されて、美術館の警備係に転職する。
任されたのは展示前から物議をかもしている作品の展示室。
そこに飾られていたのは「乳首のイエス様」だった・・・。
美術の素養なんか全くない主人公なんだけど、意外と正しい審美眼を持っている気がするところがポイント。

あと、ロバート・ハリス「首相による、ある個人的な出来事に関する弁明」
議会で“ある個人的な出来事”について弁明する英国首相。
あくまでも紳士的に、何故に首相官邸からの移動中に行方不明になり、
何故に、直結した盗難車を運転する未成年の女性の車に乗り込むことになったのか(笑)
なかなかシニックで笑える小話のような短編です。

それ以外はちょっと微妙だったかなぁ。

ちなみに本書は2001年に「天使だけが聞いている12の物語」と云うタイトルで
単行本で出ていたらしいんですが、文庫化にあたって改題と。
こんな買い難いタイトルとカバーはどうなんだと(笑)
でも確かに目についた・・・。

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