カートの本と音楽の(PUNKな)日々2

高野和明「ジェノサイド」

高野和明の「ジェノサイド」を読んでみた。
“ジェノサイド”って1944年に作られた造語だって知ってました?
僕は知らなかった。
民族や集団を絶滅させる行為を指すんだと僕は理解しているなんだけど、
本作でジェノサイドされようとしているのは?

主な舞台は日本・アフリカ・アメリカの3つ。
まずはアフリカ。
イエーガーは元グリンベレーの隊員だったが、一人息子のジャスティンが2歳で難病を発症。
莫大な治療費を稼ぐために軍を辞め、民間軍事会社にリクルートした。
イラクでの任務を終え、現在では9歳になりポルトガルで治療を受ける息子のもとへ向かうはずだったが
上司から高報酬の任務を持ちかけられる。
向かったのは南アフリカ。
4名でチームを組み、コンゴに潜入。
ピグミー族のある集団を殲滅し、ピグミーに同行するアメリカ人の人類学者も殺し、
さらに「見たことも無い生き物に遭遇したら、真っ先に殺せ」と指示される。
命令にたじろぐイエーガー達だったが、致死率100%の新種のウイルスに感染した集団を抹殺することで
人類全体を救うためだと説明を受ける。
続いて日本。
大学院で創薬化学を学ぶ小林研人は、父の葬儀を終えて研究室に復帰すると
亡くなったばかりの父親から自動送信メールが届いていた。
端折って云うと「私が戻れなかった場合はおまえが研究を引き継げ」と、
偽名のキャッシュカードと2台のノートパソコン、そして研究設備の(ある程度だけど)整った
コレまた偽名で借りていると思われるアパートの一室が用意されていた。
ある難病の特効薬を期日までに創れ。そして誰にも云うな、一人で行え。
身の危険を感じたら投げ出して構わない・・・。
いつか一人のアメリカ人が訪ねてくる。そのアメリカ人に薬を渡せ・・・って、マジで?
続いてアメリカ。
幼少時より知能指数がきわめて高かったアーサー。
長じて金銭欲も権力欲もないアーサーは、並はずれて高い知識欲を満たすべく
様々な講義に顔を出し、“観察者”になった。
研究所を渡り歩き、若くしてたどり着いた就職先はワシントンDCに本拠を構えるとあるシンクタンク。
その最大の顧客はCIAと国防総省。
上級分析官として政府の汚さの観察にも飽きたアーサーは転職を考えていたが、
上司から「ハインズマン・レポート」なるものの分析を命じられる。
このハインズマン・レポートが、アメリカ政府を震撼させ、3つの舞台を結びつけることになる。

ここまでが準備段階なんですけどね、最後まで面白く読めましたね~。
この手の世界を股に掛ける軍事スリラー的なのを日本人作家が書くと、
たいがい背伸びしちゃってる感が気になるもんだけど、
本作はそう云う感じはなく、しっかりと骨太な出来。
若干都合が良すぎる展開ではあるものの、たいへん面白い。おススメ。

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宮内悠介「ヨハネスベルグの天使たち」

宮内悠介の「ヨハネスベルグの天使たち」を読んでみた。

著者の第2短編集と云うことだが、日本製の女性型歌唱ロボット「DX9」が毎回登場する連作短編になっていて、
DX9は一種の狂言回しとなっている。
全5編で、舞台はそれぞれヨハネスベルグ、ニューヨーク、ジャララバード(アフガニスタン)、ハドラマウト(イエメン)、
そして北東京。
ちょっとメンドクサイのであらすじは省きますが、目の付けどころはとても良いと思う。
でもそれを活かしきれていないと云う感じが付きまとう。
面白いんだけど、もうちょっとと云うか背伸びしてる感と云うか、どうも読んでいてすっきりしないんだなぁ。
因みに第1短編集の「盤上の夜」直木賞の候補になり、日本SF大賞受賞。
本作もやはり直木賞候補で、日本SF大賞特別賞受賞。
僕は賞をとったとかはどうでもいいんだけれど、SF業界の人からは注目されていることは間違いない。
長編「エクソダス症候群」も刊行されたみたいなので、そちらも読んでみたいと思う。

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押井守「ガルム・ウォーズ 白銀の審問艦」

押井守の「ガルム・ウォーズ 白銀の審問艦」を読んでみた。
説明するまでもなく、押井守と云ったら映画「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」「イノセンス」などで有名な映画監督。
「ガルム・ウォーズ 白銀の審問艦」は実現しなかった映画「ガルム戦記」が元なのかな。
映画「ガルム戦記」は「ガルム・ウォーズ ザ・ラスト・ドルイド」として製作中みたいなので期待してるんだけど。

どことも知れないアンヌンという星が舞台。
アンヌンにはガルムと呼ばれる8部族が住み、戦いに明け暮れている。
ガルム達は装甲を身に纏い、男女の性差はあるが生殖能力を持たず、クローニングと記憶の転写で世代交代し
部族同士で覇権を争っていたが、現在は3部族が残るのみ。
正体不明のセルと戦うために、残った3部族はやむなく手を結んでいる。
セルは一定の周期でアンヌンに侵入してくるが、ガルムを滅ぼすために送り込まれること以外は
その意図も、どこから来るのかも一切が不明。
戦うこと以外に目的を持たないガルムたちは、死を恐れず、戦うことに疑問を持たないはずだったが、
正体も、姿形も、目的も、全く判らないセルとの戦いに、倦み疲れていた。
ある日の戦闘で、セルを導くものと思われるマラークを撃墜したガルム。
やっとその正体がつかめるやもしれぬと、マラークの墜落現場に調査隊が向かうが・・・・。

いかにも押井らしい、戦闘ものと哲学風問答の融合で興しろい。
けど、描き足りない感がハンパない。この倍ぐらいの長さがないともったいない気がする。
前半と後半で内容がガラリと変わるんですけど、どちらも中途半端な感じになってしまっているのが残念。
映画で是非。

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東野圭吾「パラドックス13」

東野圭吾の「パラドックス13」を読んでみた。

首相のもとにJAXA宇宙航空研究開発機構から緊急報告が入る。
同様の報告がNASAからホワイトハウスにももたらされる。
報告の内容は、ブラックホールのなんちゃらの影響で「P-13現象」が99.95%の確率で起きる。
現象が起きるとどうなるかは予測できない。
というか何か変化が起きる事は間違いないが、それを認識できないハズです。
なんじゃそりゃ。でも、何かが起こる事は確実な訳で。
パニックを恐れた世界の首脳たちは、厳しい緘口令を敷き、
「P-13現象」が起こる時間に大きな事故や事件が起こらないように気をつけろとだけ指示を出したのだが。

丁度その時間、所轄のヒラ刑事久我冬樹と、その兄でキャリア組の管理官誠哉の2人は
凶悪犯の逮捕劇の真っ最中。
2人とも犯人に撃たれて死んだハズだったのだが・・・・。
気が付いてみると、冬樹は生きていた。
ただ、周りの世界は一変していた・・・。

結構ありがちな設定。
なので設定そのものよりも、その中で生き抜こうとする人々の描き方で面白くも詰まらなくもなる訳ですね。
誠哉がリーダーシップを発揮して、生存者(?)たちを1人も欠けずに導こうとする姿は
僕なんかから見ると暑苦しくてウザい。なので冬樹の視点が結構大事。
こいつはこいつで考え無しで困った奴なんですがね。
後半、誠哉がとんでもない提案を始めるに至って冬樹はどう出るのか・・・と思いきや・・。
あ~、そっちに持って行くか。なるほどちょっと軽目な終わり方だね。

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貴志祐介「新世界より」

アップし忘れていた記事。

現在放映中のアニメ「新世界より」の原作、貴志祐介の「新世界より」を読んでみた。

読んでみたいな・・・・と思っているうちにアニメ化が決定。
じゃあアニメを全話視てからにするかと。
ところがこのアニメの出来が少々難ありでして、もう諦めて原作を読んでみようと。

原作の方はノベルス版が上下2段組みで900ページ超の長編。
コレは確かに面白い。貴志祐介の作品自体初めてだが、コレはイイね。

1000年後の日本が舞台。
人口は激減しているようで、たいして大きくない幾つかの町(というか村のような)に住む人々は
みな「呪力」と呼ばれる念動力を身に付けている。その代わり科学技術はかなり後退している。
主人公の早季が住むのは神栖66町。父は町長、母は図書館の司書。
ただし現代の町長・図書館司書とはかなり職掌・権力が違うようだ。
学校と云うか教育も、現代と大違いの物なんだけど、
思春期以前の、呪力をまだ持たない子どもの学校「和貴園」を無事卒業して
呪力の授業を行う「全人学校」に早季たちは進学する。
卒業と言っても、呪力が発現した子から卒業していく訳だけど。
早季は他の子たちよりも、呪力の発現が遅くてだいぶ悩んでいた。
やっと友達に追い付けて喜ぶ早季。
なのに、全人学校で感じる違和感。
そう云えば和貴園のあの子たちは・・・。

全人学校でも、居たはずの子がふいに居なくなったりと、何やら裏があるようなんだけど。
八丁標(はっちょうじめ)と呼ばれる、注連縄で作られた町の結界を出て
利根川上流へと夏季キャンプの授業へと出かけるが、早季たちの1班は
「ミノシロモドキ」と呼ばれる「国立国会図書館つくば館」と出会い、
禁じられた知識を訊き出してしまう。
ここから物語が大きく動き出す訳です。
「業魔」「悪鬼」の存在、「バケネズミ」たち、などなどナカナカ面白い。
ミノシロモドキとかバケネズミとかネーミングが椎名誠のSFっぽい。
ボノボ的な社会と云う設定も、悪鬼と絡めて考えると興味深い。

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