カートの本と音楽の(PUNKな)日々2

万城目学「悟浄出立」

万城目学の「悟浄出立」を読んでみた。

万城目学、化けたな!と云うのが正直な感想。
もともと僕の中では、外れなく面白い小説を書く若手作家と評価していたんだけど、
ここまで成長したか(上から目線だなぁ)と、
「士別れて三日、即ち更に刮目して相待すべし」との思いに駆られる訳です。

5編が収められた短編集なんですが
悟浄出立
趙雲西航
虞姫寂静
法家孤憤
父司馬遷
と、すべて中国の古典から材を取っている。
「文芸ブルータス」で、たまたま「悟浄出立」を目にして、おおこりゃ面白そうだと思ったんですが、
多分沙悟浄を主人公にした長編の内の一部なんだろうと、その時は思いまして。
なのでワザと読まないでいたんですよね、長編が完結してから読もうかと。
単行本になって手に取ってみたら、ああ・・・独立した短編だったんだと(笑)
閑話休題
中島敦の「悟浄出世」と「悟浄歎異」でも悩める人物だった悟浄ですが、
今回も悩んでます。
ひたすら行動する人である悟空。文句を言う人八戒。そして傍観者でしかない悟浄。
傍観者である立場から抜け出せるのか・・・。
ちなみに三蔵法師の人物造形については、同じ中国の古典である三国志の劉備元徳、水滸伝の宋江公明と並んで
一見無能に見えるが、器の大きさから首領として担がれる人物の代表(しかも実在の人物でありながら、
一般的には小説の登場人物としてしか知られていないという共通点もあり)としてですね、
個人的には一家言(生意気だなぁ)あるんですが、まあそれはさて置き。
なにしろ大変興しろい。
趙雲も三国志ではやや影が薄いが、今回は主人公。
虞姫とは項羽の寵姫であった虞美人のこと。
司馬遼太郎の「項羽と劉邦」なんかを読んでも虞美人なんか気にしたこともなかった。
「法家孤憤」の法家ってご存知ですか?韓非子とか昔読んだなぁ。でも、この短編での主人公は秦に仕える
下級官吏の京科(けいか)。彼と発音だけは同姓同名の荊軻(けいか)との係わりを描く作品。
史記の刺客列伝にて描かれる、始皇帝を暗殺しようとした荊軻ですが、燕を旅立つ際に詠んだ
「風蕭々として易水寒し 壮士ひとたび去りて復た還らず」も心に残る。
荊軻の列伝は史記の中でもお気に入りの話だ。
「父司馬遷」はその史記の作者である司馬遷が、宮刑(腐刑とも云う)を受けた後の話。
司馬遷の娘からの視点で描かれるが、こちらにも史記の刺客列伝の聶政の話に
同じく刺客列伝の豫譲の「士は己を知る者のために死す」をくっ付けてますね。
どちらも好きな話・・・と云うか刺客列伝自体が好きなんだな僕は。

大変ですね面白い本でした。おススメです。
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