カートの本と音楽の(PUNKな)日々2

丸谷才一「持ち重りする薔薇の花」

丸谷才一の新作「持ち重りする薔薇の花」を読んでみた。

大会社の名誉会長の応接室から話は始まる。
旧財閥系の大企業の名誉会長である梶井と、旧知の間柄である雑誌編集者の野原。
野原の希望で“ブルー・フジ・クワルテット”の逸話を、そのパトロンである梶井に伺うという小説。
長編ではなくて中篇になるのだろうか。
短編・中篇・長編の定義と区別って難しいので、ここでは長めの中編と云う事にしておきましょうか。
あらすじは、“ブルー・フジ~”についてのノンフィクションを書こうと思っている野原の希望を受けて
梶井の応接間で、“ブルー・フジ~”の面々との出会いから今日までのクワルテットの成功を
数々のエピソードの中に、自分の結婚生活や財界での活動などを絡めて語ると云うお話。
わりと肩の力の抜けた作品。
なんだけど、最後まで飽きさせずに読ませるのは丸谷才一ならではの技なのかな。
妙に会話が古風(コレはこの間読んだ「輝く日の宮」にも云えるが、あのテーマだし学者キャラだし)なんですが
多分ワザトなのだろうと私は思うので、さほど気にならない。。
一応、老実業家と若き芸術家たちの出会いから始まって、年代順にエピソードが語られていくのですが
ゴシップ小説とでも云えば良いのでしょうか、軽くサクサクとゴシップを楽しく読める小説。
艶笑的な逸話や、素人と謙遜しつつも音楽に対する造詣の深さをそこかしこに(些か衒学趣味的に)
織り交ぜる梶井がなんとはなしに親近感が湧く。
こう云うテクニック的に優れたユーモア小説を、余裕綽々で出してくるあたりに丸谷先生の老練さを感じる。
なにも重いテーマや洞察なんか無くたって、小説は書けるんだよと云われているようでもある。
日本にはなかなか無いタイプの小説だと思うんですよね、ユーモア小説としか言いようがないんだけど。
たとえば漱石の「吾輩は猫である」とかと同類というか。
面白い、笑える、爆笑だ・・・と云う小説は日本にも色々あるんですが、ちょっと毛色が違うように感じる。
丸谷訳の「ボートの三人男」とか「ガルガンチュワ」とかと同じような香りと云うのかなぁ・・・。
ま、難しい事は抜きにして、架空のクワルテットのゴシップに舌鼓を打つのもよいのでは。
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